シャツ衿
シャツというのは、スーツと比べると型を起こすのも縫うのも、それほど難しいアイテムではありません。
裁断台、本縫いミシン、バキュームアイロンなど、環境が整っていれば釦穴と釦付けを省くと一日3枚程は作れる品です。
そんなシンプルで縫いやすいシャツですが、気を使うのは<衿>でしょうか。
Vゾーンのド真ん中、シャツ衿です。
縫っている当の本人からすれば、シャツの衿付けなどそれほど難しくも思いませんが、専門誌などをめくると何故か縫製仕様について難しく書かれていて、ややこしく見えてきます。
要所の一つ、台衿の起こし(ネックポイント)
角度の違う台衿がそれぞれ二型ありますが、極端に言えば上は首と顎までの距離がしっかりある方、下は首が太く座っている方。

既成概念を捨て改めて考えると、このポイント一つでシャツの顔は180度変わります。
美しい台衿があり、その人の首に無理なく自然に納まった線が衿ぐりになる、したがってその人の衿ぐりは台衿が決めるものであって、勝手に決められる線ではないということ。
台衿の型を起こすだけでも様々なメイキングの方法論がありますが、この最もポピュラーでシンプルな作法が私なりの線引きです。
次に台衿の上に付くもの、羽根衿。
羽根衿で大事な点は<浮き>と<羽根>です。

どちらか一つの比率を違えても羽根の剣先が身頃から離れた状態、衿が浮き上がるようになってしまったり、もしくはベタっと羽根が身頃にくっついた状態、ネクタイを通すとバイヤス気味にシワが寄ったり、剣先がハネたりします。
大体よく言われるのは、その原因が羽根の形状や芯地に問題があると言われます。
が、果たしてそれが本当にそうなのか。
羽根の写真を見てみると、台衿との縫い目線がネックポイントに向かって下カーブになっています。
この時のカーブを<浮き>と言います。
本来その人の首に合わせて起こすのが基本の型ですが、この浮きばかりは首に合わすというより<ネクタイを通す浮き>になります。
私が羽根の線を引く時の根本がこれです。
タイをするか否かでこの浮きを調節し、それにより台衿との縫い合わせ後はアイロンによりクセ取りも行います。
しかし、この浮きというのが非常にややこしく、仕上がって何度かクリーニングに出すといつのまにかこの羽根の浮きはプレスにより潰れ、ネクタイを通す隙間が狭まってしまいます。
どちらを取るか、などと情けないことは言いたくないですが、良くも悪くも難しいシャツの顔。
スーツでよく言われる「ラペルの返りが辛いor甘い」「肩先が甘いor辛い」
ブリティッシュかクラシコで使い分けたりしますが、シャツの衿一つとってもそれら感覚は必要なのかもしれません。
スポンサーサイト